確定拠出年金法の附則では、「当分の間」の措置として脱退一時金の制度を設けています。 確定拠出年金(DC)は「年金」なので、原則として公的年金(国民年金や厚生年金)と同様に一定の要件を満たす(特定の年齢、障害者、本人死亡)前に受け取ることができないということです。平成29年から個人型年金の加入可能範囲の拡大したことに伴い、脱退一時金の支給要件は以前より厳格化されました。 |
コロナの影響で生活が苦しくなっています。
以前、東日本大震災の時にはiDeCoを脱退して今まで積み立てた資産を一時金として受け取ることができる制度があったという話を聞きました。今回はそのような特例措置はあるのですか。
現時点で特例措置はありません。
ただし、東日本大震災の時は3月に震災が発生し、特例措置が決まったのは同年12月でした。今回も今後どうなるかはわかりませんが、東日本大震災の時は特例に該当する加入者の要件として、
- 震災により住居又は家財が全半壊等していること
- 請求日の前月まで6ヶ月以上個人型の掛金の拠出がないこと
- 脱退一時金を復興推進計画に盛り込まれた生活再建等の事業に使用すると見込まれる者
など、かなり厳しい条件が設定されていました。(下のリーフレット参照)
また、熊本の地震の時は掛金の納付猶予の措置はとられたものの、脱退一時金の拡大特例措置はとられませんでした。
確定拠出年金(DC)は「老後の所得確保」を目的としているので仮に自己破産をしても積み立てた資産は守られます。それは本人が請求をした場合であっても同様に、積み立てた資産は将来の自分のために守られるということです。
なお、当面の資金繰りが苦しい場合、個人型DC(iDeCo)であれば年に1回に限り掛金の額を変更することができます。
また、資格喪失届を提出して掛金の拠出を停止することもできます。この場合は運用指図者として今まで積み立てた資産の運用を継続することになります。一度、運用指図者になったとしても、再び加入者になって掛金の拠出を再開することは可能です。
【参考】厚生労働省HP
「東日本大震災復興特別区域法における確定拠出年金法の特例について」
個人型CD(iDeCo)は近年の改正で、加入者(従業員)の掛金に事業主が掛金を上乗せして拠出するiDeCoプラス(中小企業掛金納付制度)の制度が創設されました。つまり、iDeCoの脱退一時金特例を認めると、個人が積み立てた資産だけではなく事業主が拠出した掛金に対する資産までもが本来の目的外で支払われることになる場合があるということです。
このように東日本大震災の頃と個人型CD(iDeCo)の仕組みが変わっていますので、脱退一時金特例が実施されるにはかなり高いハードルをクリアしなければならないように思われます。
企業型年金を実施している企業を退職しました。個人別管理資産はごくわずかしかありませんが個人型年金に資産を移換しなければいけませんか。
以下のいずれにも該当する企業型年金加入者であった者は、脱退一時金の支給を請求することができます。
- 企業型年金加入者、企業型年金運用指図者、個人型年金加入者又は個人型年金運用指図者でないこと。
- 当該請求した日における個人別管理資産の額が15,000円以下であること。
- 最後に企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6月を経過していないこと。
企業型年金加入者であった少額資産者の脱退一時金はどこに請求をしたらよいですか。
個人別管理資産は移換されていないので、その企業型年金の企業型記録関連運営管理機関又は記録関連業務を行う事業主に脱退一時金の請求をしてください。
国民年金の第1号被保険者でしたが、収入の減少により保険料が4分の1免除されることになりました。このため個人型年金加入者の資格を喪失し、個人型年金運用指図者として個人別管理資産の運用を行うことになりましたが脱退一時金を請求することはできますか。
以下のいずれにも該当する者は、脱退一時金の支給を請求することができます。
- 国民年金保険料の全部又は一部について免除されていること(任意加入被保険者等は保険料免除者になることができませんので脱退一時金の請求することができません)
- 障害給付金の受給権者でないこと
- その者の通算拠出期間が3年以下であること 又は 請求した日における個人別管理資産の額が25万円以下であること
- 最後に企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと
- 企業型年金の加入資格を喪失したときに脱退一時金の支給を受けていないこと
「通算拠出期間」とはどのような期間をいいますか。
通算拠出期間とは、原則として、企業型年金加入者期間と個人型年金加入者が納付した掛金に係る個人型年金加入者期間(要するに未納期間を除く)を合算した期間をいいます。
短期拠出者等に係る脱退一時金はどこに請求をしたらよいですか。
個人型年金運用指図者の場合は個人型記録関連運営管理機関へ、個人型年金運用指図者以外の者の場合は国民年金基金連合会へ請求してください。
受け取った脱退一時金の課税はどのようになりますか。
所得税法上の一時所得として課税されます。
一時所得には最高50万円の特別控除額がありますので他の一時所得に属する収入(生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金、懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金、法人から贈与された金品など)と合算して50万円以下であれば一時所得はゼロになります。