わかっているようでよくわからない士業の仕事。誰に頼むか困ったときの参考にしてください。
税理士の仕事
税理士(税理士法人)でなければ 行うことができない業務(税理士業務)
税理士は、他人の求めに応じ、「租税」に関し、以下の事務を行うことを業とします(税理士法第2条①)。
- 税務代理 : 「税務官公署に対する租税に関する法令、行政不服審査法の規定に基づく申告等(申告、申請、請求、不服申立て)」「その申告等、税務官公署の調査・処分に関し税務官公署に対してする主張・陳述」について、代理・代行すること
- 税務書類の作成 : 税務官公署に対する申告等に係る申告書等(申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類)を作成すること
- 税務相談 : 税務官公署に対する申告等、申告等、税務官公署の調査・処分に関し税務官公署に対してする主張・陳述や申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること
なお、「租税」に関して、以下の税は除外されています(税理士法施行令第1条)
- 印紙税、登録免許税、自動車重量税、電源開発促進税、国際観光旅客税、関税、とん税、特別とん税、狩猟税
- 法定外普通税(道府県法定外普通税、市町村法定外普通税)、法定外目的税
このような業務を「税理士業務」といい、税理士(税理士法人)でない者は、原則として税理士業務を行ってはいけません(税理士法第52条)。
なお、税理士(税理士法人)でない者がこれらの業務を行った場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(税理士法第59条①四)。
税理士(税理士法人)であれば 行うことができる業務
税理士は、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができます。
ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については 業として行うことができません(税理士法第2条②)。
社会保険労務士の仕事
社会保険労務士(社会保険労務士法人)でなければ 行うことができない業務(いわゆる1号2号業務)
社会保険労務士は、以下の事務を行うことを業とします(社会保険労務士法第2条①一~二)
- 「労働社会保険諸法令」に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類電磁的記録を含む)を作成すること
- 申請書等について、その提出に関する手続を代わってすること
- 「労働社会保険諸法令に基づく申請等(申請、届出、報告、審査請求、再審査請求その他の事項(厚生労働省令で定めるものに限る。))」「その申請等に係る行政機関等の調査・処分に関し当該行政機関等に対してする主張・陳述(厚生労働省令で定めるものを除く。)」について、代理すること(事務代理)
- 労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類(電磁的記録を含む)を作成すること。
加えて特定社会保険労務士は、以下の事務(紛争解決手続代理業務)も行うことができます。
- 一定の労働関係法律におけるあっせんの手続きや調停の手続について、紛争の当事者を代理すること
- 都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争に関するあっせんの手続について、紛争の当事者を代理すること
- 紛争の目的の価額が一定の金額以下の個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること
なお、社会保険労務士の独占業務とされる「労働社会保険諸法令」とは以下の法令をいいます(社会保険労務士法 別表第一)。
- 労働基準法
- 労働者災害補償保険法
- 職業安定法
- 雇用保険法
- 労働保険審査官及び労働保険審査会法
- 職業能力開発促進法
- 駐留軍関係離職者等臨時措置法(一部)
- 最低賃金法
- 中小企業退職金共済法
- 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法
- じん肺法
- 障害者の雇用の促進等に関する法律
- 激甚じん災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(一部)
- 労働災害防止団体法
- 港湾労働法
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
- 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 家内労働法
- 勤労者財産形成促進法
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
- 沖縄振興特別措置法(一部)
- 労働安全衛生法
- 作業環境測定法
- 建設労働者の雇用の改善等に関する法律
- 賃金の支払の確保等に関する法律
- 本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(一部)
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
- 地域雇用開発促進法
- 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律
- 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
- 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
- 林業労働力の確保の促進に関する法律(一部)
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
- 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
- 石綿による健康被害の救済に関する法律(一部)
- 次世代育成支援対策推進法
- 職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律
- 生活困窮者自立支援法(一部)
- 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法
- 青少年の雇用の促進等に関する法律
- 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律
- 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律
- 健康保険法
- 船員保険法
- 社会保険審査官及び社会保険審査会法
- 厚生年金保険法
- 国民健康保険法
- 国民年金法
- 年金生活者支援給付金の支給に関する法律
- 独立行政法人福祉医療機構法(一部)
- 石炭鉱業年金基金法
- 児童手当法
- 平成22年度等における子ども手当の支給に関する法律
- 平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法
- 高齢者の医療の確保に関する法律
- 介護保険法
- 前各号に掲げる法律に基づく命令
- 行政不服審査法(前各号に掲げる法令に係る不服申立ての場合に限る)
社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに規定する事務は、原則として社会保険労務士(社会保険労務士法人)でなければ他人の求めに応じ報酬を得て業とすることができません(社会保険労務士法第27条)。
ただし、
- 公認会計士又は外国公認会計士が行う公認会計士法第2条第2項に規定する業務(財務書類の調製、財務に関する調査・立案、財務に関する相談)
- 税理士又は税理士法人が行う税理士法第2条第1項に規定する業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談)
は例外として認められています(社会保険労務士法施行令第2条)。
なお、社会保険労務士(社会保険労務士法人)でない者がこれらの事務を行った場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます(社会保険労務士法第32条の2①六)
社会保険労務士(社会保険労務士法人)であれば 行うことができる業務(いわゆる3号業務)
社会保険労務士(社会保険労務士法人)は、事業における労務管理その他の労働に関する事項や労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導することができます(社会保険労務士法第2条①三)。