厚生労働省のHPで公表されているモデル就業規則の最新版が、令和2年11月版から令和3年4月版になりました。
改正 高年齢者雇用安定法が4月から施行されたことから、関係する条文で変更がありました。この変更箇所について解説をします。
高年齢者雇用安定法の改正内容
少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
従前の制度
従前は、65歳までの雇用機会を確保するため、事業主に対して高年齢者雇用確保措置
- 65歳まで定年引上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入(子会社・関連会社等の特殊関係事業主によるものを含む)
- 定年廃止
のいずれかを講ずることのみを義務付けていました。
法改正による高年齢者就業確保措置の新設
法改正により、従前の65歳までの雇用確保義務に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、事業主に対して高年齢者就業確保措置として、
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入(子会社・関連会社等の特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に「事業主が自ら実施する社会貢献事業」または「事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」の事業に従事できる制度の導入
のいずれかの措置を講ずる努力義務を設けることとされました。(定年の70歳への引き上げを義務付けるものではありません。)
なお、4または5による場合は、労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の同意を得た上で、措置を導入する必要があります。
【参考】厚生労働省HP「高年齢者雇用安定法の改正 ~70歳までの就業機会確保~」
65歳超雇用推進助成金
65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備など、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成するもので、次の3コースで構成されています。
- 65歳超継続雇用促進コース
- 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
- 高年齢者無期雇用転換コース
【参考】厚生労働省HP「65歳超雇用推進助成金」
モデル就業規則の改訂箇所
法改正により高年齢者就業確保措置が新設されたことから、モデル就業規則 第49条の「定年等」について、内容の改訂が行われています。
《例1》
すべての労働者について、定年を満70歳にする場合の作り方です。
令和3年4月版 | 令和2年11月版 |
定年を満70歳とする例 (定年等) |
定年を満65歳とする例 (定年等) |
《例2》
定年は満65歳にするものの、労働者からの希望があれば70歳まで継続雇用という場合の作り方です。
令和3年4月版 | 令和2年11月版 |
定年を満65歳とし、その後希望者を継続雇用する例 (定年等) |
定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例 (定年等) |
《例3》
第1項と第2項は従前版の《例2》と全く同じです。満65歳までは希望があれば(必ず)継続雇用、その後は一定の条件をクリアすれば満70歳まで継続雇用という場合の作り方です。
令和3年4月版 (新) |
定年を満60歳とし、その後希望者を継続雇用する例(満65歳以降は対象者基準あり) (定年等) |
《例4》
第1項は従前版の《例1》と全く同じです。加えて一定の条件をクリアすれば、満70歳まで継続雇用という場合(第2項)または継続的に業務委託契約を締結する場合(第3項)の作り方です。
令和3年4月版 (新) |
定年を満65歳とし、その後希望者の意向を踏まえて継続雇用または業務委託契約を締結する例(ともに対象者基準あり) (定年等) |
就業規則の見直し必要性
今回のモデル就業規則の改訂は、「努力義務」の部分が反映されたに過ぎないので、自社就業規則を早急に改訂しなければならないということではありません。ただし、次回見直しの際には今回海底部分を意識する必要があります。