労働者派遣法 第41条では、派遣元だけでなく、派遣労働者を受け入れる派遣先にも責任者の選任を求めています。
派遣先責任者の業務
派遣先責任者は、次の業務を行います。
- 労働者派遣法及び労働基準法等の適用に関する特例等により適用される法律の規定、派遣労働者に係る労働者派遣契約の定め並びに派遣元事業主から受けた通知の内容についての関係者への周知
- 派遣受入期間の延長通知に関すること
- 派遣先における均衡待遇の確保に関すること
- 派遣先における教育訓練の実施状況の把握
- 利用できる福利厚生施設の把握
- 派遣元に提供した派遣先の労働者に関する情報、派遣労働者の業務の遂行状況等の情報の把握
- 派遣先管理台帳の作成、記載、保存及び記載事項の通知に関すること
- 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理
- 安全衛生に関すること(派遣先において安全衛生を統括管理する者及び派遣元事業主との連絡調整)
具体的には、派遣労働者の安全衛生が的確に確保されるよう、例えば、以下の内容に係る連絡調整を行うことです。
- 健康診断(一般定期健康診断、有害業務従事者に対する特別な健康診断等)の実施に関する事項(時期、内容、有所見の場合の就業場所の変更等の措置)
- 安全衛生教育(雇入れ時の安全衛生教育、作業内容変更時の安全衛生教育、特別教育、職長等教育等)に関する事項(時期、内容、実施責任者等)
- 労働者派遣契約で定めた安全衛生に関する事項の実施状況の確認
- 事故等が発生した場合の内容・対応状況の確認
- その他、派遣元事業主との連絡調整
具体的には、例えば、派遣元の連絡調整の中心となる派遣元責任者との間において、4、5のほか、派遣就業にともない生じた問題の解決を図っていくことです。
派遣先責任者の選任方法
誰を選任するか
派遣先責任者は、一定の者を選任するように努めなければなりません。
【参照】「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の13)
また、自己の雇用する労働者(法人の場合は役員を含む)の中から、事業所その他派遣就業の場所ごとに専属の派遣先責任者を選任しなければなりません。
「専属」とは、派遣先責任者に関する業務だけを行うということではなく、他の事業所の派遣先責任者と兼任しないという意味です。
なお、株式会社及び有限会社の監査役は派遣先責任者に選任できません。
派遣先は、選任した派遣先責任者について、派遣就業に関する労働者派遣法や労働基準法等の趣旨、派遣先責任者の職務、必要な事務手続等に関する適切な知識を取得できるよう、
派遣先責任者を新たに選任したとき、労働関係法令の改正が行われたとき等の機会を捉え、「派遣先責任者講習」を受講させることが望ましいとされています。
派遣先責任者講習の日程や講習機関等については、厚生労働省のこちらのページをご覧ください。
選任する人数
派遣先責任者は、事業所の派遣労働者100 人ごとに1人以上を選任しなければなりません。
ただし、事業所の派遣労働者数と派遣先の労働者数の合計が5人以下のときは、選任する必要はありません。
なお、物の製造の業務に50 人を超える派遣労働者を従事させる事業所では、原則として、製造業務に従事する派遣労働者100人当たり1人以上、「製造業務専門派遣先責任者」(当該派遣労働者を専門に担当する派遣先責任者)を選任しなければなりません。ただし、製造業務専門派遣先責任者のうち1人は、製造業務以外の業務に従事する派遣労働者を併せて担当しても構いません。
また、安全衛生上必要な場合は、製造業務専門派遣先責任者に、製造業務に従事する派遣労働者と製造業務に付随する製造以外の業務(製造付随業務)に従事する派遣労働者を、派遣労働者の合計数が100人を超えない範囲内で、併せて担当させることができます。
罰則
派遣先が法令の定めによる派遣先責任者を選任しない場合、罰則が設けられています。
労働者派遣法 第61条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。 一~二 (略) 三 第34条、第35条の2、第35条の3、第36条、第37条、第41条又は第42条の規定に違反した者 四~六 (略)
第62条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第58条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。 |