コロナの影響で支給総額が依然増加している雇用調整助成金。
コロナ前は景気拡大により雇用保険勘定には余裕がありました。そのため、保険料や国庫負担金(収入)を法律で定められている本来の水準より少なくするなどの特例措置があったのですが、今では一転して積立金が枯渇した状態になっています。
保険の理論から言えば、保険金(支出)が増えれば保険料(収入)を増やさなければならないことになります。
労働保険特別会計の仕組み
労働保険は国が運営する保険です。保険なので一般会計とは別に特別会計を設け、保険料(収入)と保険金(支出)の収支を明確にしています。
労働保険特別会計には3つの勘定(労災勘定、雇用勘定、徴収勘定)がありますが、今回は「雇用勘定」の収入(歳入)について検証します。
【参考】財務省HP「令和2年版特別会計ガイドブック」
上図の通り、雇用勘定の財源を大きく分けると、
- 事業主や労働者からの保険料
- 一般会計からの国庫負担金
の2種類から構成されています。
雇用保険の保険料率
令和3年度の雇用保険料率は、令和2年度と同じで以下の通りとなっています。
【参考】厚生労働省HP「令和3年度の雇用保険料率について」
労働保険徴収法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律)の条文から読み解くと以下の通りになります。
国庫負担率
国庫負担率は、労働保険徴収法ではなく雇用保険法に定められています。
コロナ前は積立金残高がかなりあったので、平成29年度から令和3年度までは雇用保険法の本則で定められている10/100を国庫が負担するとされています。
雇用保険料及び国庫負担の推移
雇用保険料及び国庫負担の推移は以下の通りです。
この表を見ると、平成15年度は雇用保険料率は19.5/1000(うち労働者負担分は8/1000)となっており、現在の9/1000(うち労働者負担分は3/1000)と比較するとかなり高い水準であったことがわかります。
失業等給付関係と雇用保険二事業関係の収支状況
失業等給付関係と雇用保険二事業関係の収支状況も見ておきましょう。
失業等給付関係は、雇用調整助成金の財源とするために積立金を雇用安定事業へ貸し出したため、積立金残高がほぼなくなっています。
一方、二事業関係の収支は安定資金残高の数字に注目してください。
令和元年度決算では1兆5400億円あった残高が、雇用調整助成金への支払いが膨らんだことによりほぼがなくなりました。
失業等給付関係からの借入や一般会計からの受入によりようやく資金繰りを回している状況です。
【参考】厚生労働省HP
「労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定に基づき雇用保険率を変更する件について 概要」
まとめ
これらの状況を鑑みると、令和4年度の雇用保険は保険料率も国庫負担額も原則に近づける(=負担が増える)可能性が非常に高いと思われます。
今後、それぞれの法改正について労働政策審議会で議論がされます。さて、どのような結果になるのでしょうか。