概要
これまで、同じひとり親であっても、離婚・死別であれば寡婦(夫)控除が適用されるのに対し、未婚の場合は適用されず、婚姻歴の有無によって控除の適用が異なっていました。また、男性のひとり親と女性のひとり親で寡婦(夫)控除の額が違うなど、男女の間でも扱いが異なっていました。
そこで、今回の改正では、全てのひとり親家庭に対して公平な税制支援を行う観点から、
- 婚姻歴や性別にかかわらず、生計を同じとする子(総所得金額等が48万円以下)を有する単身者について、同一の「ひとり親控除」(控除額35万円)を適用することとします。
- 上記以外の寡婦については、引き続き寡婦控除として、控除額27万円を適用することとし、子以外の扶養親族を持つ寡婦についても、男性の寡夫と同様の所得制限(所得500万円(年収678万円)以下)を設けることとしました。
ただし、ひとり親控除、寡婦控除のいずれについても、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者は対象外とします。
【出典】財務省HP「令和2年度税制改正(案)のポイント(令和2年1月)」
1.未婚のひとり親に対する税制上の措置
所得者が「ひとり親」である場合には、ひとり親控除として、その人のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から35万円を控除することとされました。
《用語》総所得金額(緑色の右側)
なお、「ひとり親」とは、
現に婚姻をしていない人 又は 配偶者の生死の明らかでない一定の人
のうち、次に掲げる要件を満たすものをいいます。
イ その人と生計を一にする子を有すること。
- その人と生計を一にする子とは、他の人の同一生計配偶者又は扶養親族とされている人以外で、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が48万円以下の子をいいます。
ロ 合計所得金額(上の表の青色)が500万円以下であること。
ハ その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと。
その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人とは、次の人をいいます。 | |
a |
その人が住民票に世帯主と記載されている人である場合には、 その人と同一の世帯に属する人の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨 その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされた人 |
b |
その人が住民票に世帯主と記載されている人でない場合には、 その人の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨 その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされているときのその世帯主 |
2.寡婦(寡夫)控除の見直し
寡婦の要件について、次の要件を追加した上で、寡婦(寡夫)控除がひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改組されました。改正前から要件が追加されているので、従前 寡婦控除の対象ではなかった人が改正後の「寡婦」に該当することはありません。
イ 扶養親族を有する寡婦について、合計所得金額(上の表の青色)が500万円以下であること。
ロ その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと。
その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人とは、次の人をいいます。 | |
a |
その人が住民票に世帯主と記載されている人である場合には、 その人と同一の世帯に属する人の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨 その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされた人 |
b |
その人が住民票に世帯主と記載されている人でない場合には、 その人の住民票に世帯主との続柄が世帯主の未届の夫又は未届の妻である旨 その他の世帯主と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる続柄である旨の記載がされているときのその世帯主 |
また、「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除の特例が廃止されました。
3.令和2年分の年末調整の際の申告
フロー図において、〔改正後〕の「年末調整時の申告」欄が「必要」となっている人は、令和2年分の年末調整の際にその異動内容について申告をする必要があります。令和2年の最後に給与の支払を受ける日の前日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、給与の支払者に提出してください。
記載例
(注) 改正前の「寡婦(特別の寡婦を除く)」に該当する人が、上記適用判定の結果、「寡婦」に該当する場合において、その人と生計を一にする子を有するときは、「ひとり親」(控除額:35万円)に該当し、年末調整の際にその異動内容について申告する必要があります。
4.令和3年1月以降の源泉徴収における変更点
令和3年1月1日以後に支払うべき給与等及び公的年金等に対する源泉徴収からは、新たに創設されたひとり親控除や改正後の寡婦控除が適用されるとのことですが、月々の源泉徴収税額の計算について具体的にはどのような変更が生じるのでしょうか。
給与等を支払う際に源泉徴収をする税額は「給与所得の源泉徴収税額表」によって求めるところ、この「給与所得の源泉徴収税額表」の甲欄を適用する場合には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に基づいて、扶養親族等の数を算定する必要があります。
給与等に対する源泉徴収税額を求める際の扶養親族等の数の算定に当たっては、「ひとり親」又は「寡婦」に該当する場合には、扶養親族等の数に1人を加えて計算します。
【出典】国税庁HP「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係)」