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判決文を読む(大阪医科薬科大学事件)

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最高裁の判示事項

 無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例

主 文
1 第1審被告の上告に基づき,原判決を次のとおり変更する。
 第1審判決を次のとおり変更する。

  1. 第1審被告は,第1審原告に対し,5万5110円 及び これに対する平成28年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2. 第1審原告のその余の請求を棄却する。

2 第1審原告の上告を棄却する。
3 訴訟の総費用は,これを250分し,その1を第1審被告の負担とし,その余を第1審原告の負担とする。

→ 裁判所HP(R2.10.13/令和1(受)1055)

 

下級審の判示事項

大阪高裁

 期間の定めのある労働契約を締結して学校法人においてアルバイト職員として勤務していた控訴人が,
期間の定めのない労働契約を締結して正職員として勤務していた労働者との間で,
基本給,賞与,年末年始及び創立記念日の休日における賃金支給,年休の日数,夏期特別有給休暇,業務外の疾病(私傷病)による欠勤中の賃金並びに附属病院の医療費補助措置に相違があることは労働契約法20条に違反すると主張して差額賃金等相当額の損害賠償を請求した事案において,
正職員との職務内容等との違いに鑑み,賞与を正職員の支給基準の6割を下回る支給しかしない限度,夏期特別有給休暇(年間5日)を支給しない限度並びに私傷病による欠勤中の賃金につき1か月分及び休職給(2割)につき2か月分を下回る支給しかしない限度で労働条件の相違が不合理であるとして,これに相当する賞与等相当額の損害賠償の限度で請求が認容された事例

主 文
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は,控訴人に対し,109万4737円及びこれに対する平成28年4月29日[原審における請求の趣旨変更の申立書送達の日の翌日]から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 控訴人のその余の請求を棄却する。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その9を控訴人の,その余を被控訴人の各負担とする。
5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

→ 裁判所HP(H31.2.15/平成30(ネ)406)

大阪地裁

 有期雇用職員として被告で就労していた原告が,
無期雇用職員である被告の正職員との間における賃金額や賞与の有無等の労働条件の相違につき,労働契約法20条に違反する不合理な相違であるなどと主張して損害賠償等を請求した事案で,
原告が主張する被告の正職員との間の労働条件の相違は,いずれも労働契約法20条の不合理な労働条件の相違にはあたらないなどとして,請求が棄却された事例

主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は,原告の負担とする。

→ 裁判所HP(H30.1.24/平成27(ワ)8334)

 

《参考》
 大阪地裁判決(H30.1.24)と大阪高裁判決(H31.2.15)の間に、同一労働同一賃金に関する最高裁判決(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件=いずれもH30.6.1)が出ています。

 また、法改正前後の条文は以下の通りです。

 

改正前の労働契約法 第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、
当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない

 

現在のパートタイム・有期雇用労働法 第8条(不合理な待遇の禁止)

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、
当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない

 

同 第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(以下「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、
当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、
短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない

 

当初(地裁提訴時)の争点

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有期雇用(アルバイト)職員として就労していた原告の請求内容

  1. 雇用契約において定められた労働条件は,学校法人における無期雇用職員の労働条件を下回っており,労働契約法20条に違反するとして,
    主位的には無期雇用職員と同様の労働条件が適用されることを前提として,
    また,予備的には労契法20条に違反する労働条件を適用することは不法行為にあたるとして,
    無期雇用職員との差額賃金等合計1038万1660円の支払を求める。
  2. 学校法人がアルバイト職員に対して労働契約法20条に違反する労働条件を適用していたことは不法行為にあたるとして,慰謝料等合計136(135?)万5347円の支払を求める。
  3. 上記1及び2に対する平成28年4月29日(請求の趣旨変更の申立書の送達日の翌日)から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

 

原告(アルバイト職員)の勤務内容

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  • 所定労働時間はフルタイム、契約当初の時給は950円
  • 後任のために作成した教室事務員としての業務の引継書によれば,担当した業務は,
    毎日することが,「各先生方の予定の把握,確認」「ポットの水を替える。」「コーヒーを沸かす。」「○○教授のコーヒーを朝夕2回入れる。」「1階メールセンターに郵便物を取りに行く(できれば朝夕2回)」に尽き,
    一週間のうちすることも,「ゴミがいっぱいになっていたら捨てる。」「水曜日午後に声をかけて白衣を集めてクリーニングに出し,木曜日に先週のを取りに行く。」など,
    締日(毎月5日)までにすることも,「請求書がきたらどの研究費で支払うか確認後,購入伺を作成して研究協力課に提出(詳細は白いファイルに載っている)」「科研費のときは業者の納品書に研究協力課の検収印があるか確認」などといった,何らの判断も伴わないか単純な判断のみの簡易な事務作業ばかりである。

 

事実関係

  • 学校法人ではアルバイト職員(時給制)から契約職員(月給制),契約職員から正職員への試験による登用制度が設けられていた。前者については,アルバイト職員のうち,1年以上の勤続年数があり,所属長の推薦を受けた者が受験資格を有するものとされ,受験資格を有する者のうち3~5割程度の者が受験していた。平成25年から同27年までの各年においては16~30名が受験し,うち5~19名が合格した。また,後者については,平成25年から同27年までの各年において7~13名が合格した。
  • 原告が多忙であると強調していたことから,原告が欠勤した際の後任として,フルタイムの職員1名とパートタイムの職員1名を配置したが,恒常的に手が余っている状態が続いたため,1年ほどのうちにフルタイムの職員1名のみを配置することとした。
  • 正職員休職規程では,私傷病により労務を提供することができない状態にある正職員に対し給料(6か月間)及び休職給(休職期間中において標準給与の2割)を支給することとしている。

 

下級審(大阪高裁)の判決

争点1(期間の定めがあることを理由とする相違にあたるか)

  • 労契法20条の「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいう。
  • これを本件についてみると,賃金,賞与等控訴人が主張するアルバイト職員とA氏を含む正職員との労働条件の相違は,アルバイト職員と正職員とでそれぞれ異なる就業規則等が適用されることにより生じているものであるから,当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができる。したがって,控訴人とA氏を含む正職員との上記労働条件は,同条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たるということができる。

 

争点2(不合理な労働条件の相違にあたるか)

(1) 労働条件の相違を判断するに当たっての比較対象者及び被控訴人の休職規程等の適用範囲

  • アルバイト職員と正職員との労働条件の相違が不合理か否かを判断するために比較対照すべき無期契約労働者は,学校法人の正職員全体であり,かつ,アルバイト職員の労働条件はアルバイト職員就業内規に定められているところにより,他の規程が適用されるものではない。

(2) 賃金(基本給)【適法=確定】

  • 職務,責任,異動可能性,採用に際し求められる能力に大きな相違があること,賃金の性格も異なることを踏まえると,正職員とアルバイト職員で賃金水準に一定の相違が生ずることも不合理とはいえない。
  • その相違は,約2割にとどまっていることからすると,そのような相違があることが不合理であるとは認められない。

(3) 賞与【×違法 → 上告】

  • 学校法人における賞与が,正職員として賞与算定期間に在籍し,就労していたことそれ自体に対する対価としての性質を有する以上,同様に被控訴人に在籍し,就労していたアルバイト職員,とりわけフルタイムのアルバイト職員に対し,額の多寡はあるにせよ,全く支給しないとすることは不合理というしかない
  • 正職員とアルバイト職員とでは,実際の職務も採用に際し求められる能力にも相当の相違があったというべきであるから,アルバイト職員の賞与算定期間における功労も相対的に低いことは否めない。よって,フルタイムのアルバイト職員とはいえ,その職員に対する賞与の額を正職員に対すると同額としなければ不合理であるとまではいうことができない
  • 学校法人が契約職員に対し正職員の約80%の賞与を支払っていることからすれば,アルバイト職員に対し,賃金同様,正職員全体のうち平成25年4月1日付けで採用された者と比較対照し,その者の賞与の支給基準の60%を下回る支給しかしない場合は不合理な相違に至るものというべきである。

(4) 年末年始や創立記念日の休日における賃金支給【適法=確定】

  • 年末年始及び創立記念日の休日については,アルバイト職員は時給制であるため休日が増えればそれだけ賃金が減少するが,正職員は月給制であるため賃金が減額されるわけではないという違いが生ずる。
    これは,賃金について一方は時給制,他方は月給制を採用したことの帰結にすぎず,正職員に月給制,アルバイト職員に時給制を採用すること自体が不合理とはいえないから,このような相違が生ずることをもって不合理とはいえない。

(5) 年休の日数【適法=確定】

  • 年休の日数に1日の相違が生ずるとしても,不合理な労働条件の相違であるとはいうことができない。

(6) 夏期特別有給休暇【×違法=確定】

  • アルバイト職員であってもフルタイムで勤務している者は,職務の違いや多少の労働時間(時間外勤務を含む。)の相違はあるにせよ,夏期に相当程度の疲労を感ずるに至ることは想像に難くない。そうであれば,少なくとも,年間を通してフルタイムで勤務しているアルバイト職員に対し,正職員と同様の夏期特別有給休暇を付与しないことは不合理である

(7) 私傷病による欠勤中の賃金及び休職給【×違法 → 上告】

  • アルバイト職員であってもフルタイムで勤務し,一定の習熟をした者については,学校法人の職務に対する貢献の度合いもそれなりに存するものといえ,一概に代替性が高いとはいい難い部分もあり得る。そのようなアルバイト職員には生活保障の必要性があることも否定し難いことからすると,アルバイト職員であるというだけで,一律に私傷病による欠勤中の賃金支給や休職給の支給を行わないことには,合理性があるとはいい難い
  • アルバイト職員の契約期間は更新があり得るとしても1年であるのが原則であり,当然に長期雇用が前提とされているわけではないことを勘案すると,私傷病による賃金支給につき1か月分,休職給の支給につき2か月分(合計3か月,雇用期間1年の4分の1)を下回る支給しかしないときは,正職員との労働条件の相違が不合理であるというべきである。

(8) 附属病院の医療費補助措置【適法=確定】

  • 附属病院受診の際の医療費補助措置は,恩恵的な措置というべきであって,労働条件に含まれるとはいえず,正職員とアルバイト職員との間の相違は労契法20条に違反する不合理な労働条件の相違とはいえない 。

 

争点4(被控訴人に不法行為法上の故意・過失があるか)

  • 学校法人が本件で不合理とされたような労働条件の相違が労契法20条に違反しないと判断したことには過失があったというべきである。

 

争点5(損害の有無 及び その額)

  • 労働条件(賞与を支給しない)を適用したことによってアルバイト職員が賞与相当額を喪失した損害額は,平成25年度についてはアルバイト職員の平均月額賃金(時間外手当を除く。)である14万9170円の1.9か月分(0.7か月分+2.5か月分の合計3.2か月分の60%)である28万3423円,平成26年度については控訴人の平均月額賃金(時間外手当を除く。)である15万5677円の2.7か月分(4.6か月分の60%)である42万0327円(円未満切捨て)の合計70万3750円となる。【→最高裁でゼロに変更】
  • 労働条件(夏期特別有給休暇を付与しない)を適用したことによってアルバイト職員が夏期特別有給休暇を享受することができなかった損害額は,平成25年度及び平成26年度に各5日の有給休暇を取得することができなかったことで,平均日額賃金の各5日分(平成255年度につき4904円×5日=2万4520円,平成26年度につき5127円×5日=2万5635円)の合計5万0110円となる。【確定】
  • 労働条件(私傷病による欠勤中に賃金を支給せず,休職給も支給しない)を適用したことによって被った損害額は,
    ① 私傷病で欠勤中に賃金を支給せず,休職給も支給しないことは,私傷病で欠勤中の賃金1か月分,休職給2か月分を下回る賃金及び休職給しか支給しない限度で不合理な相違であり、アルバイト職員は,欠勤直前の賃金(時給制で変動があるため,平成26年度の平均月額賃金(時間外手当を除く。)である15万5677円とする。)の1か月分15万5677円と,その休職給2か月分である6万2270円(15万5677円×0.2×2か月,円未満切捨て)の合計21万7947円
    ② 私学共済の加入資格そのものは労働条件ではないものの,控訴人が私学共済の加入資格を失ったことは,被控訴人が私傷病の期間に賃金を支給せず,休職給も支払わなかったことの帰結であるから,そのことにより追加して支払うことを余儀なくされた金員は,労契法20条違反の労働条件を適用した不法行為と相当因果関係のある損害と評価し,私学共済の資格喪失に伴い,健康保険の短期掛金(月額5677円)と介護保険の介護掛金(月額855円)が任意継続掛金(月額1万3042円)となって6510円増加し,厚生年金の長期掛金(月額1万0635円)が国民年金保険料(月額1万5590円)となって4955円増加した。控訴人は,上記の合計月額1万1465円の2か月分である2万2930円
    の合計24万0877円となる。【→最高裁でゼロに変更】
  • 労契法20条に違反する労働条件の適用によって被った損害は,上記の損害賠償金によって回復されることとなるので,慰謝料請求は理由がない。
  • 弁護士費用の相当額は,上記の合計額99万4737円の約1割である10万円と認められる。【→最高裁で5000円に減額】

以上の総合計額は109万4737円となる。【→最高裁で5万5110円に減額】

 

最高裁判決

① 賞与

  • 正職員に対する賞与の支給額がおおむね通年で基本給の4.6か月分であり,そこに労務の対価の後払い一律の功労報償の趣旨が含まれることや,正職員に準ずるものとされる契約職員に対して正職員の約80%に相当する賞与が支給されていたことなどをしんしゃくしても,教室事務員である正職員と原告との間に賞与に係る労働条件の相違があることは,不合理であるとまで評価することができるものとはいえない
  • 教室事務員である正職員に対して賞与を支給する一方で,アルバイト職員である原告に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらない

② 私傷病による欠勤中の賃金

  • 正職員休職規程において,私傷病により労務を提供することができない状態にある正職員に対し給料(6か月間)及び休職給(休職期間中において標準給与の2割)を支給することとしたのは,正職員が長期にわたり継続して就労し,又は将来にわたって継続して就労することが期待されることに照らし,正職員の生活保障を図るとともに,その雇用を維持し確保するという目的によるものである。
  • 私傷病による欠勤中の賃金の性質及びこれを支給する目的に照らすと,同賃金は,このような職員の雇用を維持し確保することを前提とした制度であるといえる。
  • 正職員が配置されていた教室では病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務等が存在し,正職員は正職員就業規則上人事異動を命ぜられる可能性があるなど,教室事務員である正職員とアルバイト職員との間には職務の内容及び変更の範囲に一定の相違があった
  • 教室事務員である正職員が,極めて少数にとどまり,他の大多数の正職員と職務の内容及び変更の範囲を異にするに至っていたことについては,教室事務員の業務の内容や人員配置の見直し等に起因する事情が存在したほか,職種を変更するための試験による登用制度が設けられていたという事情が存在する。
  • 教室事務員である正職員に対して私傷病による欠勤中の賃金を支給する一方で,アルバイト職員である原告に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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