モデル就業規則(第19条) 労働時間 及び 休憩時間
就業規則に記載する事項には、「絶対的必要記載事項」という必ず記載しなければならない事項が3つあります。
1.労働時間関係
始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
2.賃金関係
賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
3.退職関係
退職に関する事項(解雇の事由を含む)
このうち、「1.労働時間関係」の中の「労働時間及び休憩時間」について、モデル就業規則第19条では上のように定めています。
[例1]完全週休2日制を採用する場合の規程例」
(労働時間及び休憩時間) 第19条 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。 2 始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、前日までに労働者に通知する。 (以下、交代勤務の項目は省略) |
検討すべき事項
「始業時刻」と「終業時刻」の定義
始業時刻とは出社する最遅時刻なのか、業務を開始する時刻なのか。終業時刻とは退社してもいい時刻なのか、業務を終了する時刻なのか。
普通は考えなくてもいいことかもしれません。しかし、釣りバカ日誌のハマちゃんみたいな従業員が絶対にいないとは限りません。就業規則は会社のルールですから、将来のトラブルを回避するためには、誰が読んでも誤解が生じないように用語の定義をきちんとしておかなければいけません。
休憩時間をやむを得ない事情により変更する場合、前日までに通知する必要があるか
始業時刻や終業時刻を前日までに従業員に通知することは必要ですが、休憩時間まで前日の通知が必要でしょうか。
もちろん、事前にわかっていれば早いうちに通知をすることは従業員が気持ちよく働くことにつながります。しかし、実務上は急な仕事が飛び込んできたために休憩時間を変更せざるを得ないケースが大半でしょう。
ですから、「休憩時間」は「始業・終業の時刻」と異なり、「前日までの通知」を規定に置くべきではありません。
休憩時間の一斉付与・自由利用
休憩時間は、途中付与・一斉付与・自由利用の3原則が定められています(労働基準法第34条)。
就業規則に時間を定めることによって途中付与の原則は明確になります。一斉付与の原則は労使協定により変更になることが法律にも規定されていますが、就業規則にも盛り込むことにより従業員にもわかりやすい就業規則になります。
一方、自由利用の原則は法律に原則しか規定されていないので、就業規則で一歩踏み込んだところまで決めておくことが必要です。
休憩時間の自由利用の原則については、最高裁の判例(目黒電報電話局事件/昭和52.12.13)のほか、以下の通達があります。
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休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えない。(昭和22.9.13発基17号)
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休憩時間中の外出を許可制とすることは、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない。(昭和23.10.30基発1575号)
修正後 就業規則(案)
以上の点を踏まえて、以下のように修正しました。
(所定労働時間) 第19条 労働時間は、1週間については40時間、1日については8時間とする。 2 始業時刻は9時とし、終業時刻は18時とする。始業時刻とは業務を開始する時刻のことをいい、終業時刻とは業務を終了する時刻のことをいう。 3 業務の都合その他やむを得ない事情により、前項で定めた始業時刻及び終業時刻を繰り上げ、又は繰り下げることがある。この場合、会社は前日までに従業員へ通知する。
(休憩時間) 第19条の2 休憩時間は、12時から13時までとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。 2 休憩時間は一斉に付与する。ただし、労使協定に定めるところにより交替制とすることがある。 3 従業員は、第1項で定めた休憩時間を自由に利用することができる。ただし、職場秩序及び風紀を乱す行為、施設管理を妨げる行為、その他服務規律に反する行為を行ってはならない。 |